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令和時代2022〜2025年社会・経済重要度 A

出生数減少・こども基本法とこども家庭庁―少子化対策はなぜ子ども政策の再編へ進んだのかしゅっしょうすうげんしょう こどもきほんほうとこどもかていちょう しょうしかたいさくはなぜこどもせいさくのさいへんへすすんだのか

一言でいうと

令和期には出生数の減少がさらに進み、2022年の日本人の出生数は77万759人と初めて80万人を下回り、2024年には68万6,173人となって初めて70万人を下回りました。政府はこの人口動向への対応を強める一方、子ども政策を少子化対策だけに限定せず、こどもの権利、意見反映、子育て支援、困難を抱えるこどもへの支援などを省庁横断で扱う制度へ再編しました。2022年にはこども基本法とこども家庭庁設置法が成立し、2023年4月にこども基本法が施行され、こども家庭庁が発足します。同年12月にはこども未来戦略が閣議決定され、児童手当の拡充など子育て世帯への支援強化が進められました。少子化を一つの政策の成否だけで説明せず、人口構造の変化と、子ども政策そのものを統合・再編する動きを分けて捉えることが重要です。

出生数80万人割れは、何を示したのか

日本では平成期から少子化が長期的に進んでいました。令和に入っても出生数は減少を続け、厚生労働省の人口動態統計では、2022年の日本人の出生数が77万759人となり、初めて80万人を下回りました。合計特殊出生率も1.26となり、当時の過去最低でした。

出生数は、その年に子どもを産む年齢層の人口規模にも左右されます。そのため出生数減少を、結婚観や子育て支援など一つの要因だけで説明することはできません。若年人口そのものの減少、未婚化・晩婚化、雇用・所得、仕事と子育ての両立、住宅・教育費など複数の社会条件が関係します。

政府にとっては、少子化が将来の人口規模だけでなく、地域社会、労働力、社会保障制度など幅広い分野に影響する課題として重みを増しました。ただし、後に整備されるこども基本法やこども家庭庁は、出生数を増やすことだけを目的とした制度ではありません。

こども基本法は、従来の少子化対策と何が違うのか

2022年6月15日、こども基本法が成立し、同月22日に公布されました。法律は2023年4月1日に施行され、日本国憲法と児童の権利に関する条約の精神にのっとり、全てのこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会を目指すことを掲げました。

同法は、こども施策の基本理念を定めるだけでなく、政府がこども大綱を策定することや、国・地方公共団体がこどもや子育て当事者の意見を政策へ反映するための措置を講じることも定めています。政策の対象を『少子化を止めるための子育て世帯支援』だけにせず、現に生活するこどもの権利と成長を政策の中心に置いた点が重要です。

したがって、こども基本法を少子化対策法とだけ覚えるのは適切ではありません。少子化への対応と、こどもの権利・福祉・育ちを保障する政策は重なりますが、目的は同一ではありません。令和期の制度再編では、この二つを一つの政策体系の中で扱う方向が強まりました。

こども基本法は、出生数を増やすことだけを目的とせず、こどもの権利、意見反映、健やかな成長を含むこども施策全体の基本法です。

なぜこども家庭庁という新しい組織が必要とされたのか

こども基本法と同じ2022年6月には、こども家庭庁設置法も成立しました。これに基づいて2023年4月1日、内閣府の外局としてこども家庭庁が発足しました。発足式は4月3日に行われています。

それまで子ども・子育て政策は、内閣府、厚生労働省、文部科学省など複数の省庁にまたがっていました。こども家庭庁は、こども政策について政府内の司令塔機能を担い、少子化対策、子ども・若者育成支援、こどもの貧困、児童虐待、保育や子育て支援など関連分野を横断的に調整する役割を持ちます。

新しい庁ができたからといって、教育を含む全ての子ども政策が一つの省庁へ移ったわけではありません。文部科学省などに残る所管もあり、こども家庭庁は関係省庁と連携しながら基本政策の企画・総合調整を行う仕組みです。組織再編の意味は、政策課題を省庁ごとに分断せず横断的に扱う司令塔を設けた点にあります。

こども未来戦略は、子育て支援をどう拡充しようとしたのか

2023年12月22日、政府は『こども未来戦略』を閣議決定しました。背景には、出生数の減少が想定以上の速さで進んでいるという危機感があり、子育て世帯への経済的支援、全てのこども・子育て世帯への支援、共働き・共育ての推進などを組み合わせて政策を強化する方針が示されました。

具体策には、児童手当の所得制限撤廃や対象年齢の高校生年代までの拡大、多子世帯への加算、出産・子育て支援、保育サービス、育児休業給付の拡充などが含まれます。政策は現金給付だけでなく、保育・働き方・子育て環境を含む複数の領域へ広がりました。

ただし、政策を拡充したから出生数が直ちに反転すると断定することはできません。出生数には人口構成や雇用・所得、結婚・出産をめぐる社会環境など多くの要因が関係します。こども未来戦略は、少子化の進行に対して政府が支援の規模と範囲を広げた政策として位置づけるのが適切です。

70万人割れは、制度再編後も続く課題をどう示したのか

2025年6月、厚生労働省は2024年の人口動態統計月報年計(概数)を公表し、日本人の出生数が初めて70万人を下回ったことが明らかになりました。その後の確定数では、2024年の出生数は68万6,173人、合計特殊出生率は1.15となり、いずれも過去最低でした。

これは、こども家庭庁の発足やこども未来戦略の決定後も、人口動向がすぐには変わらなかったことを示します。しかし、短期間の出生数だけを使って特定政策を成功・失敗と評価するのも適切ではありません。人口政策や子育て支援は効果が現れるまで時間がかかり、人口構造そのものの影響も大きいためです。

令和期の特徴は、少子化を将来人口の問題としてだけでなく、現在のこどもの権利、家庭への支援、働き方、地域社会、社会保障までつながる政策課題として扱う制度へ再編したことにあります。出生数の減少が続く中で、その制度がどのような効果を持つかは、現在進行中の課題として評価する必要があります。

出生数の減少と、こどもの権利・福祉を中心にした政策再編は関連しますが、同じ問題ではありません。

Review

入試で押さえるポイント

  • 2022年の日本人出生数は77万759人で初めて80万人を下回った
  • こども基本法は2022年6月に成立し、2023年4月1日に施行された
  • こども家庭庁は2023年4月1日に発足し、こども政策の企画・総合調整を担う司令塔となった
  • こども基本法は少子化対策だけでなく、こどもの権利、意見反映、健やかな成長を含む基本法
  • 政府は2023年12月22日にこども未来戦略を閣議決定し、児童手当など子育て支援の拡充を進めた
  • 2024年の日本人出生数は68万6,173人となり、初めて70万人を下回った

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  1. 問1

    令和期の出生数減少は、子育て支援制度が不十分だったという一つの原因だけで説明でき、若年人口の減少や未婚化・晩婚化、雇用・所得などはほとんど関係しない。

  2. 問2

    こども基本法は出生数を増やすことだけを目的とする少子化対策法ではなく、こどもの権利や意見反映、健やかな成長を含む施策全体の基本法である。

  3. 問3

    こども家庭庁の発足により、教育を含むすべての子ども政策が一つの省庁へ完全に統合され、文部科学省などには関連所管が残らなくなった。

  4. 問4

    2023年のこども未来戦略は、児童手当だけでなく、保育、育児休業、共働き・共育てなど複数の分野で支援を拡充する方針を示した。

  5. 問5

    こども家庭庁発足後も2024年の出生数が減少したため、その短期的な数字だけで制度再編全体の成功・失敗を確定できる。

Timeline

関連する年表

前後の出来事とつなげて位置を確認できます。

  1. 日本人の出生数が初めて80万人を下回る
  2. こども基本法が成立する
  3. こども家庭庁が発足する
  4. 政府が「こども未来戦略」を決定する
  5. 2024年の日本人の出生数が70万人を下回ったことが公表される

Sources

参考資料

  1. 令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況厚生労働省

    2022年の日本人出生数77万759人、合計特殊出生率1.26を確認

  2. こども基本法こども家庭庁

    2022年6月の成立、2023年4月の施行、基本理念・こども大綱・意見反映の制度を確認

  3. こども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)の概要こども家庭庁

    こども家庭庁の所掌、司令塔機能、2023年4月1日の施行を確認

  4. こども未来戦略会議内閣官房

    2023年12月22日のこども未来戦略閣議決定と政策検討の経緯を確認

  5. こども未来戦略(リーフレット等)こども家庭庁

    児童手当、子育て世帯支援、共働き・共育て支援など主な施策を確認

  6. 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況厚生労働省

    2024年の日本人出生数68万6,173人、合計特殊出生率1.15を確認