生産年齢人口の減少・総人口ピークと地方の縮小―日本はなぜ人口減少社会へ入ったのか
一言でいうと
平成の人口問題は、出生率の低下だけでなく、年齢構成と地域分布が実際に縮小局面へ入ったことに特徴があります。15〜64歳の生産年齢人口は1995年の8716万人をピークに減少へ転じ、働く世代の比重が次第に低下しました。出生数と死亡数の差である自然増減では、2005年に戦後初めて自然減となった後、2006年はいったん自然増へ戻りましたが、2007年から再び自然減となり、その後は減少幅が拡大していきます。総人口も人口推計では2008年の1億2808万4千人をピークに減少局面へ入りました。ただし、人口減少は全国で同じ速度・同じ形で進んだわけではありません。地方では若年層の流出と高齢化が重なり、学校・交通・医療・商業など生活サービスの維持が課題となる地域が増える一方、東京圏では2000年代に大幅な転入超過が続き、人口と雇用・教育機会の集中が進みました。こうした地域差を背景に、政府は2014年に『地方創生』を政策課題として掲げ、東京一極集中の是正、若い世代の就労・結婚・子育て環境、地域ごとの課題解決を結び付けようとしました。人口減少社会への移行は一つの年に突然起きた事件ではなく、少子化、高齢化、世代規模の変化、人口移動が時間差を伴って重なった結果として捉える必要があります。
生産年齢人口は、なぜ総人口より先に減少し始めたのか
人口減少社会への移行を理解するには、総人口だけでなく年齢構成を見る必要があります。15〜64歳の生産年齢人口は、戦後の人口増加とともに拡大し、1995年に8716万人でピークを迎えました。しかし、その後は減少へ転じ、2005年には8409万人となっています。
これは総人口がまだ大きく減っていない段階でも、働く世代の人数が先に縮小し始めたことを意味します。出生数の減少によって若い世代の規模が小さくなり、人数の多い世代が次第に65歳以上へ移ることで、生産年齢人口の比率も低下していきました。
ただし、生産年齢人口の減少を、そのまま労働力人口や就業者数の減少と同一視することはできません。女性や高齢者の就業率、景気、雇用制度などによって実際の労働参加は変わるためです。平成末の人手不足や働き方改革は後のTopicで扱い、ここでは人口構造そのものの転換を中心に見ます。
総人口が減少へ転じる前に、生産年齢人口は1995年から減少していました。人口問題は『何人いるか』だけでなく『どの年齢層が何人いるか』を見る必要があります。
出生数と死亡数の関係は、いつ自然減へ変わったのか
人口の自然増減は、出生数から死亡数を差し引いて考えます。日本では長く出生数が死亡数を上回っていましたが、2005年には死亡数が出生数を上回り、戦後初めて自然減となりました。ただし翌2006年には出生数が死亡数をわずかに上回り、自然増へ戻っています。
2007年には再び自然減となり、出生数108万9818人に対して死亡数110万8334人、自然増減はマイナス1万8516人でした。2008年には自然減が5万人を超え、その後も出生数の減少と高齢化に伴う死亡数の増加によって自然減が定着していきます。
ここで重要なのは、自然減と総人口減少が同じ指標ではないことです。総人口には国際人口移動なども影響するため、出生数が死亡数を下回ったからといって、その年の総人口が必ず同じ幅だけ減るわけではありません。複数の人口指標を区別して読む必要があります。
総人口は、なぜ2008年を境に減少局面へ入ったのか
総務省の人口推計では、日本の総人口は2008年の1億2808万4千人をピークとして、その後は減少局面に入ったとされています。出生率低下が社会問題として強く認識された1990年代から、実際に総人口の持続的減少が確認されるまでには時間差がありました。
この時間差は、人口構造の変化が世代単位で進むためです。出生数が減っても、既に生まれている人口がすぐに消えるわけではありません。若い世代の人数が小さくなり、高齢者人口が増え、死亡数が出生数を上回る状態が続くことで、やがて総人口全体の減少として表面化しました。
したがって『2008年に少子化が始まった』わけではありません。少子化はそれ以前から進んでおり、1995年の生産年齢人口ピークや2007年以降の継続的な自然減など、複数の転換点を経て総人口減少へつながりました。
2008年は総人口のピークですが、人口減少社会への移行は少子化・年齢構成・自然増減の長期変化が重なった結果です。
人口減少は、地方と東京圏で同じように進んだのか
人口減少は全国一律には進みませんでした。2005年国勢調査では、東京都や神奈川県、沖縄県など人口が増えた地域がある一方、多くの道県では人口が減少していました。同じ県内でも中心都市と中山間地域、郊外では人口動向が異なり、地域差は大きくなります。
人口移動でも東京圏への集中が目立ちました。総務省の住民基本台帳人口移動報告では、東京圏は1994年と1995年を除き長期的に転入超過が続き、2001年以降は10万人を超える大幅な転入超過が続く時期がありました。進学や就職の機会が若い世代を都市部へ引き付け、地方では出生数の減少に若年層流出が重なる地域も生まれました。
地方で人口が減ると、利用者や担い手の減少によって商店、公共交通、学校、医療・介護などの維持が難しくなる場合があります。一方、東京圏では人口集中によって住宅、通勤、保育など別の課題が生じます。『地方が縮小し東京だけが成長した』という単純な対比ではなく、地域ごとに異なる人口構造と課題を見ることが必要です。
人口減少と東京一極集中は、なぜ『地方創生』の政策課題になったのか
2010年代に入ると、人口減少と地域経済・生活基盤の縮小を一体の問題として扱う議論が強まりました。政府は2014年にまち・ひと・しごと創生本部を設け、同年末に『まち・ひと・しごと創生長期ビジョン』と『総合戦略』を閣議決定しました。
長期ビジョンでは、人口減少時代の到来、東京圏への人口集中、地方から都市への人口移動などを課題として示し、『東京一極集中』の是正、若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現、地域の特性に即した課題解決を基本的な視点としました。つまり、人口問題は出生数だけでなく、仕事、住まい、教育、移動、地域サービスを含む政策課題として捉え直されました。
ただし、人口減少の原因や速度は地域によって異なり、政策を始めたこと自体が人口減少や東京集中の解消を意味するわけではありません。平成の人口転換を学ぶうえでは、少子化対策、社会保障、地方創生をそれぞれ別の政策領域として区別しながら、人口構造の変化によって相互に結び付いたことを理解することが重要です。
Review
入試で押さえるポイント
- 15〜64歳の生産年齢人口は1995年の8716万人をピークに減少へ転じた。
- 人口の自然増減は2005年に戦後初の自然減となったが、2006年はいったん自然増へ戻り、2007年から再び自然減となった。
- 総務省の人口推計では、総人口は2008年の1億2808万4千人をピークに減少局面へ入った。
- 生産年齢人口、自然増減、総人口は別の指標であり、それぞれの転換時期を区別する。
- 人口減少は全国一律ではなく、地方で減少が進む一方、2000年代には東京圏への大幅な転入超過が続いた。
- 2014年の地方創生では、人口減少への対応と東京一極集中の是正、若い世代の就労・結婚・子育て、地域課題の解決が結び付けられた。
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- 問1
日本では総人口が減少局面へ入る前の1995年に、15〜64歳の生産年齢人口がピークを迎えて減少へ転じていた。
生産年齢人口は1995年にピークを迎え、総人口が2008年にピークとなるより先に減少へ転じていました。
本文の該当箇所を確認する - 問2
日本の人口は2005年に自然減となって以降、一度も自然増へ戻ることなく連続して自然減が続いた。
2005年に戦後初の自然減となりましたが、2006年はいったん自然増へ戻り、2007年から再び自然減となりました。
本文の該当箇所を確認する - 問3
総人口が2008年にピークを迎えたことは、日本の少子化が2008年に初めて始まったことを意味する。
少子化はそれ以前から進んでおり、生産年齢人口の減少や自然減など複数の変化を経て総人口減少へつながりました。
本文の該当箇所を確認する - 問4
人口減少は全国一律に同じ形で進んだのではなく、地方で減少が進む一方、東京圏では大幅な転入超過が続く時期があった。
地域ごとの人口動向には差があり、地方の若年層流出と東京圏への人口集中が同時に進む局面がありました。
本文の該当箇所を確認する - 問5
2014年に地方創生が始まったことで、人口減少と東京一極集中はその時点で解消された。
地方創生は人口減少や東京一極集中への対応を政策課題として掲げたもので、政策開始自体が問題の解消を意味するわけではありません。
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Timeline
関連する年表
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Sources
参考資料
- 統計Today No.21 国勢調査でみる日本の人口・世帯総務省統計局
生産年齢人口が1995年に8716万人でピークとなり、その後減少したことを確認
- 統計Today No.115 平成27年国勢調査 人口等基本集計結果から総務省統計局
人口推計で2008年の1億2808万4千人をピークに総人口が減少局面へ入ったことを確認
- 平成19年人口動態統計(確定数)の概況厚生労働省
2007年の出生・死亡・自然増減と、2006年が自然増だったことを確認
- 統計トピックスNo.26 3大都市圏の人口移動総務省統計局
2000年代の東京圏で大幅な転入超過が続いたことを確認
- まち・ひと・しごと創生長期ビジョンについてまち・ひと・しごと創生本部
2014年の人口減少認識、東京一極集中、地方創生の基本的視点を確認
