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平成時代1990年代半ば〜2000年代社会・経済重要度 A

就職氷河期・派遣自由化と非正規雇用―バブル崩壊後の雇用はなぜ長期的に変化したのかしゅうしょくひょうがきはけんじゆうかとひせいきこよう ばぶるほうかいごのこようはなぜちょうきてきにへんかしたのか

一言でいうと

バブル崩壊後の長期停滞は、日本の雇用の入口と働き方の両方を変えました。1990年代前半から企業が新卒採用を絞り込み、政策上おおむね1993〜2004年に学校卒業期を迎えた世代は『就職氷河期世代』と呼ばれるようになります。日本では新卒一括採用が正社員への主要な入口だったため、卒業時の景気悪化は一時的な就職難にとどまらず、その後の正社員移行や賃金・職業経験にも長く影響しうる問題となりました。同じ時期には雇用制度も変化し、1999年の労働者派遣法改正で派遣対象業務が一部の禁止業務を除いて原則自由化され、2003年改正を受けて2004年には製造業務への派遣も可能になりました。さらに企業は景気変動や国際競争、人件費管理などに対応するため、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など多様な雇用形態を活用し、非正規雇用の割合は1995年の20.9%から2000年26.0%、2005年32.6%へ上昇しました。ただし、非正規雇用の拡大を派遣法改正だけで説明することはできません。非正規雇用の大部分を派遣社員だけが占めていたわけではなく、景気低迷、企業の雇用管理、女性や高齢者を含む労働供給側の変化、働き方へのニーズなど複数の要因が重なっています。平成期の雇用変化は、新卒採用の縮小による世代問題と、企業が正社員以外の雇用を広く組み合わせるようになった構造変化を区別しながら理解する必要があります。

なぜ1990年代に『就職氷河期』と呼ばれる新卒就職難が生まれたのか

バブル経済崩壊後、企業は売上や収益の悪化、不良債権問題、過剰な設備・雇用の調整などに直面しました。とくに1990年代後半には金融不安も重なり、企業は人件費の増加に慎重になって新規学卒者の採用枠を大きく絞りました。厚生労働省は、1990年代前半以降に雇用環境が悪化し、新規学卒者の就職難が『就職氷河期』と呼ばれるようになったと整理しています。

現在の政策では、おおむね1993〜2004年に学校卒業期を迎え、厳しい雇用環境のなかで就職活動を行った人びとを就職氷河期世代としています。これは後年の支援政策で用いられる大まかな区分であり、すべての卒業者が同じ経験をしたという意味ではありません。学歴、性別、地域、専攻、卒業年によって就職状況には差がありました。

就職氷河期は特定の一年ではなく、バブル崩壊後に新卒採用が長期間低迷した時期と、その時期に学校から職業へ移行した世代をめぐる問題です。

卒業時の不況は、なぜその後の職業生活にも影響しやすかったのか

日本の大企業を中心とする雇用慣行では、新規学卒者をまとめて採用し、正社員として職場内で経験を積ませる仕組みが長く重要な役割を持ってきました。そのため卒業時に正社員の求人が少ないと、いったん非正規雇用や無業になった若者が、その後に同じ条件で正社員採用へ入り直すことは容易ではありませんでした。

内閣府の分析では、就職氷河期の大学新卒就職率は通常期より低く、同世代が30歳代になった後も正規雇用比率が過去の世代より低めにとどまる傾向が示されています。一方で、後に正社員へ移行した人も多く、世代全体を一様に『非正規のまま』とみなすのも正確ではありません。

重要なのは、学校卒業時の景気という本人が選びにくい条件が、その後の職業経験の積み方に影響しやすかった点です。このため就職氷河期は、単なる若年失業率の一時的上昇ではなく、後年まで支援政策の対象となる世代問題になりました。

1999年と2003年の労働者派遣法改正は、何を変えたのか

労働者派遣制度そのものは昭和期の1985年労働者派遣法から始まっており、平成期に突然生まれた制度ではありません。当初は派遣できる専門的な業務を列挙する方式でしたが、1999年改正では考え方が反転し、一部の禁止業務を除いて派遣対象業務を原則自由化する、いわゆるネガティブリスト方式へ移りました。

ただし、自由化後もすべての業務を無制限に派遣へ置き換えられたわけではありません。従来からの専門的な26業務以外には派遣受入期間の制限が設けられるなど、業務によって規制が異なりました。1999年改正の背景には、働き方や企業の人材需要の多様化、ILO181号条約への対応などがありました。

さらに2003年の法改正で、それまで対象外だった物の製造業務への派遣が認められ、2004年3月から施行されました。製造現場にも派遣労働が広がったことは2000年代の雇用変化を考える重要な制度変更ですが、非正規雇用全体の増加をこの改正だけの結果とすることはできません。

1999年改正は派遣対象を原則自由化し、2003年改正を受けて2004年には製造業務への派遣が解禁されましたが、派遣労働と非正規雇用全体は同じものではありません。

非正規雇用は、なぜ派遣社員以外も含めて増えたのか

総務省の労働力調査を用いた厚生労働省資料では、役員を除く雇用者に占める非正規雇用の割合は1995年20.9%、2000年26.0%、2005年32.6%と上昇しました。ここでいう非正規雇用には、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など複数の雇用形態が含まれます。

企業側には、長期停滞のなかで固定的な人件費を抑えたいという動機に加え、需要の変化に応じて人員を調整したい、専門的な人材を必要な期間に活用したいという事情がありました。国際競争や産業構造の変化も企業の雇用管理に影響しました。

一方、労働者側にも、家事・育児や学業との両立、短時間勤務、定年後の再雇用など多様な事情がありました。したがって非正規雇用を一律に『望まない働き方』とみなすことはできません。ただし正社員を希望しながら非正規で働く人も存在し、賃金、社会保険、職業訓練、雇用安定などの格差が政策課題となりました。

平成の雇用変化を、なぜ一つの『規制緩和』だけで説明できないのか

就職氷河期と非正規雇用の増加は同じ時期に進みましたが、両者は同じ現象ではありません。就職氷河期は、とくに新卒市場の縮小によって学校から安定した職業への移行が難しくなった世代問題です。非正規雇用の増加は、企業の雇用管理、産業構造、人口構成、働き方の選択、労働法制などが長期的に重なった変化です。

労働者派遣法の改正はその一部を形づくりましたが、非正規雇用の中心にはパート・アルバイトなどもありました。また景気が回復すると正社員への移行が進んだ人もいるため、『氷河期世代は全員非正規になった』『派遣自由化が就職氷河期を生んだ』という説明はいずれも不正確です。

平成期の重要な変化は、企業が正社員を中核としながらも複数の雇用形態を組み合わせる傾向を強め、卒業時の景気や雇用形態の違いが個人のキャリアに長く影響することが社会問題として認識された点にあります。

Review

入試で押さえるポイント

  • 就職氷河期世代は政策上、おおむね1993〜2004年に学校卒業期を迎えた世代を指し、バブル崩壊後の新卒採用縮小の影響を強く受けたこと
  • 日本の新卒一括採用慣行のもとでは卒業時の景気悪化が正社員への初期参入を難しくし、その後の雇用にも影響しうること
  • 1999年労働者派遣法改正で派遣対象業務が原則自由化され、2003年改正を受けて2004年に製造業務への派遣が可能になったこと
  • 非正規雇用の割合が1995年20.9%、2000年26.0%、2005年32.6%へ上昇し、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など多様な雇用形態を含むこと
  • 非正規雇用の拡大は景気、企業の雇用管理、人口・働き方の変化、制度改正など複数要因によるもので、派遣法改正だけの結果ではないこと

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  1. 問1

    就職氷河期世代とは、1993〜2004年ごろに卒業した人の全員が同じように就職できず、その後も非正規雇用のままだった世代を指す。

  2. 問2

    新卒一括採用が正社員への重要な入口だったため、卒業時の景気悪化は、その後の職業経験や正社員移行にも長く影響しうる問題となった。

  3. 問3

    労働者派遣制度は1999年の法改正で初めて創設され、その時点から製造業務への派遣も自由に認められた。

  4. 問4

    非正規雇用には派遣社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など複数の雇用形態が含まれる。

  5. 問5

    平成期の非正規雇用増加は、労働者派遣法の規制緩和だけで説明できる。

Timeline

関連する年表

前後の出来事とつなげて位置を確認できます。

  1. 新卒採用の抑制が続き「就職氷河期」と呼ばれる状況が長期化する
  2. 労働者派遣法が改正され派遣対象業務が原則自由化される
  3. 労働者派遣の対象が製造業へ拡大される
  4. 非正規雇用の比率が上昇し雇用形態の多様化が進む

Sources

参考資料

  1. 中高年の活躍支援のご案内厚生労働省

    就職氷河期世代をおおむね1993〜2004年頃に就職活動を行った世代とする政策上の範囲と、現在まで続く就労課題を確認

  2. 第2章 第2節 働き方の変化と就業機会内閣府

    バブル崩壊後の新卒就職率低下、新卒採用の景気感応性、就職氷河期世代への長期的影響を確認

  3. これまでの労働政策の主な動き③(主要な制度改正とその背景)厚生労働省

    1999年派遣法改正による対象業務の原則自由化と、2003年改正による製造業務派遣解禁・受入期間延長を確認

  4. 平成23年版 労働経済の分析厚生労働省

    バブル崩壊後の正規雇用絞り込み、1990年代半ば〜2000年代半ばの若年雇用悪化と非正規雇用比率上昇を確認

  5. 非正規雇用労働者の状況厚生労働省

    非正規雇用割合が1995年20.9%、2000年26.0%、2005年32.6%へ上昇した長期推移を確認

  6. 平成16年 労働経済の分析 第I部第1章厚生労働省

    2004年時点の非正規雇用の構成と、派遣だけでなくパート・アルバイト・契約社員等を含むことを確認