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平成時代1993〜2016年政治・外交重要度 A

環境基本法・京都議定書からパリ協定へ―日本の環境政策はなぜ地球規模の温暖化対策へ広がったのかかんきょうきほんほうきょうとぎていしょからぱりきょうていへ にほんのかんきょうせいさくはなぜちきゅうきぼのおんだんかたいさくへひろがったのか

一言でいうと

平成期の環境政策では、国内の公害対策を土台にしながら、地球温暖化のように一国だけでは解決できない問題への対応が大きな柱になりました。1993年の環境基本法は、公害対策基本法などを引き継ぎつつ、『地球環境保全』を含む環境政策の基本理念と国・地方公共団体・事業者・国民の責務を整理しました。1997年には京都で気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開かれ、京都議定書が採択されます。議定書は先進国などに温室効果ガスの数値目標を課し、日本は2008〜2012年の第一約束期間に基準年比6%削減を約束しました。これを受けて1998年には地球温暖化対策推進法が制定され、国内の温暖化対策を進める法的枠組みが整えられました。その後、京都議定書の仕組みでは削減義務を負う国が限られることなどが国際交渉の課題となり、2015年のCOP21でパリ協定が採択されました。パリ協定では先進国だけでなく全ての締約国が自国で決める削減目標などを提出し、5年ごとに更新していく仕組みが採られています。日本は2016年11月に協定を受諾し、同年12月に日本について効力が生じました。京都議定書とパリ協定はどちらも気候変動対策の国際枠組みですが、前者が先進国などに国別の削減約束を課したのに対し、後者は全ての国の参加と各国の自主的な目標提出・更新を軸とする点で制度設計が異なります。

1993年の環境基本法は、従来の公害対策と何が違ったのか

高度経済成長期には大気汚染や水質汚濁などの公害が深刻化し、公害対策基本法や各種規制法による対策が進められました。しかし1980年代から1990年代にかけては、オゾン層破壊や地球温暖化、生物多様性など、原因と影響が国境を越える環境問題への関心も高まりました。1992年の地球サミットも、環境と開発を世界規模で考える流れを強めました。

こうした変化を受け、1993年11月に環境基本法が制定されました。同法は環境政策の基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者、国民の責務を整理するとともに、『地球環境保全』を法律上の重要な概念として位置づけました。従来の公害規制を捨てたのではなく、公害対策を含む環境行政を、より広い環境保全政策の中へ組み直したと見る必要があります。

環境基本法は、公害対策を終わらせた法律ではなく、公害対策を含む環境行政を地球規模の環境問題まで視野に入れた基本政策へ広げました。

京都議定書は、温室効果ガス削減にどのような国際ルールを導入したのか

1992年に採択された気候変動枠組条約は、地球温暖化への国際協力の土台をつくりましたが、各国に具体的な削減量を一律に課す条約ではありませんでした。そこで削減義務をより具体化する交渉が進み、1997年12月、京都で開かれたCOP3で京都議定書が採択されました。

京都議定書は、条約の附属書I国を中心とする先進国・市場経済移行国に、2008〜2012年の第一約束期間について国ごとの排出削減・抑制目標を設定しました。全体では1990年比で少なくとも5%削減することが目標とされ、日本には6%削減の約束が割り当てられました。

日本国内では、議定書採択を受けて1998年に地球温暖化対策推進法が制定されました。国・地方公共団体・事業者・国民が温暖化対策に取り組む枠組みを整え、その後の法改正では京都議定書目標達成計画や温室効果ガス算定・報告・公表制度などが整備されました。国際交渉で決まった目標を、国内法と政策へ落とし込む過程が進んだのです。

京都議定書の達成と制度上の課題は、なぜ次の枠組みにつながったのか

京都議定書は2005年に発効し、日本は2008〜2012年の第一約束期間に6%削減という約束の達成を目指しました。環境省の整理では、国内の温室効果ガス総排出量だけを見ると第一約束期間の平均は基準年比で増加しましたが、森林等吸収源や京都メカニズムによるクレジットを算入した結果、約束を達成しました。

一方で、京都議定書は削減義務を負う国が先進国などに限られ、世界の排出構造が変化するなかで、より幅広い国が参加する枠組みが必要だという課題が強まりました。気候変動対策では、各国の経済発展段階や責任の違いに配慮しながら、主要排出国を含む広い参加をどう実現するかが次の国際交渉の中心になります。

したがって、京都議定書からパリ協定への移行を『京都議定書が失敗したから廃止された』と単純化するのは適切ではありません。京都議定書は数値目標と算定・報告の国際的経験を積み上げ、その経験と限界の双方が次の枠組みづくりへつながりました。

パリ協定は、京都議定書とどのように違う仕組みを選んだのか

2015年12月のCOP21で採択されたパリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求するという長期目標を掲げました。最大の制度上の特徴は、先進国だけでなく全ての締約国が参加する枠組みをつくったことです。

各国は『国が決定する貢献(NDC)』として、自国の削減目標や取組を作成・提出し、5年ごとに更新します。京都議定書のように条約本文で先進国ごとの削減率を割り当てる方式とは異なり、各国が自国の事情を踏まえて目標を設定しつつ、透明性の確保や世界全体の進捗確認を通じて取組を引き上げていく設計です。

日本は2016年4月にパリ協定へ署名し、同年11月8日に国会承認と受諾書の寄託を行いました。協定自体は11月4日に国際的に発効しており、日本については12月8日に効力が生じました。この日付の違いは、協定全体の発効と各国に対する発効を区別するうえで重要です。

京都議定書は先進国などの国別削減約束、パリ協定は全ての締約国がNDCを提出・更新する仕組みが中心であり、同じ制度ではありません。

平成の環境政策は、なぜ国内規制だけでは完結しなくなったのか

公害では、特定の工場や地域の排出規制、被害救済など国内制度が重要な役割を果たします。これに対して温室効果ガスは世界中で排出され、気候への影響も国境を越えるため、日本国内だけで削減しても問題全体を解決できません。国際的に目標や報告方法を調整し、各国の政策を積み重ねる必要があります。

そのため平成期には、環境基本法による国内政策の再編、COP3と京都議定書、温暖化対策推進法、パリ協定というように、国内法と国際協定が相互に関係しながら政策が発展しました。ただし、気候変動政策と原子力・再生可能エネルギーなど個別のエネルギー政策は重なる部分があっても同一ではなく、後者は別Topicで扱います。

Review

入試で押さえるポイント

  • 1993年の環境基本法が、公害対策を含む環境政策の基本理念を整理し、『地球環境保全』を政策対象として位置づけたこと
  • 1997年12月のCOP3で京都議定書が採択され、日本は第一約束期間に基準年比6%削減を約束したこと
  • 1998年の地球温暖化対策推進法が、京都議定書採択を受けた国内温暖化対策の法的枠組みとなったこと
  • 京都議定書が先進国などに国別の数値目標を課したのに対し、パリ協定は全ての締約国がNDCを提出・更新する仕組みを採ったこと
  • パリ協定は2015年12月に採択され、日本は2016年11月8日に受諾書を寄託し、日本については同年12月8日に効力が生じたこと

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  1. 問1

    1993年の環境基本法は、従来の公害対策を廃止して地球環境問題だけを扱うための法律だった。

  2. 問2

    京都議定書で、日本は2008〜2012年の第一約束期間に基準年比6%の温室効果ガス削減を約束した。

  3. 問3

    日本は京都議定書の第一約束期間に、国内の温室効果ガス総排出量そのものを基準年比6%以上減らしたため、森林吸収源やクレジットを使わず目標を達成した。

  4. 問4

    パリ協定は、先進国だけでなく全ての締約国が自国のNDCを作成・提出し、5年ごとに更新する仕組みを採っている。

  5. 問5

    京都議定書とパリ協定は、どちらも条約本文で先進国ごとの削減率を割り当てる同じ制度設計である。

Timeline

関連する年表

前後の出来事とつなげて位置を確認できます。

  1. COP3で京都議定書が採択される
  2. 環境基本法が制定される
  3. COP21でパリ協定が採択される

Sources

参考資料

  1. 環境基本法(平成5年法律第91号)環境省

    1993年環境基本法の目的、地球環境保全の定義、公害を含む環境政策の基本枠組みを確認

  2. The Kyoto ProtocolUnited Nations Framework Convention on Climate Change

    京都議定書の1997年12月11日採択、2005年発効、先進国等への削減約束という制度の基本を確認

  3. 地球温暖化対策推進法の成立・改正の経緯環境省

    1998年法制定と、2002年・2005年改正による京都議定書実施の国内制度整備を確認

  4. The Paris AgreementUnited Nations Framework Convention on Climate Change

    パリ協定の2015年12月12日採択、2016年11月4日発効、長期温度目標を確認

  5. Nationally Determined Contributions (NDCs)United Nations Framework Convention on Climate Change

    全締約国によるNDCの作成・提出と5年ごとの更新というパリ協定の制度設計を確認

  6. パリ協定外務省

    日本の2016年4月22日署名、11月8日国会承認・受諾書寄託、12月8日の対日発効を確認