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平成時代2001〜2004年政治・外交重要度 A

9.11同時多発テロとイラク派遣―自衛隊の海外活動はPKOからどう拡大したのかきゅうてんいちいちどうじたはつてろといらくはけん じえいたいのかいがいかつどうはぴーけーおーからどうかくだいしたのか

一言でいうと

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを受け、日本政府は同年にテロ対策特別措置法を成立させ、海上自衛隊をインド洋へ派遣して米国などの艦船への補給支援を始めました。これは1992年のPKO協力法に基づく国連平和維持活動への参加とは異なり、国際的なテロ対策に取り組む諸外国の活動を支援するための時限的な特別措置法でした。さらに2003年のイラク戦争後には、別のイラク復興支援特別措置法を制定し、2004年から陸上自衛隊をイラク南部サマワへ派遣して給水・医療・公共施設の復旧などの人道復興支援を行いました。こうして平成前半に始まった自衛隊の海外活動は、国連PKOだけでなく、個別の国際危機に対応する特別措置法を通じた後方支援や復興支援へ広がりました。ただし、それぞれは目的・法的根拠・活動条件が異なり、一つの制度がそのまま拡張したものではありません。

9.11後、日本はなぜ新しい特別措置法を必要としたのか

2001年9月11日、アメリカで同時多発テロ事件が起こりました。国連安全保障理事会はテロ攻撃を国際の平和と安全に対する脅威と認め、アメリカはアフガニスタンで軍事行動を開始します。日本政府も国際的なテロ対策への協力を重要課題としました。

しかし、1992年のPKO協力法は、国連平和維持活動などへの参加を定めた法律です。アメリカなどが行う対テロ軍事活動への補給支援を、その法律の枠内で実施する制度ではありませんでした。そこで政府は、9.11後の国際的な取組に対応するため、期限を区切ったテロ対策特別措置法を新たに整備しました。

同法は2001年10月29日に国会で成立し、11月2日に公布・施行されました。諸外国の軍隊などへの物品・役務の提供や、被災民への救援などを可能にする一方、自衛隊が外国軍隊の武力行使そのものを行う仕組みではありませんでした。

PKO協力法とテロ対策特別措置法は別の法律です。『自衛隊の海外活動』という共通点だけで、同じ制度として覚えないことが重要です。

インド洋で海上自衛隊は何を行ったのか

政府は2001年11月16日にテロ対策特別措置法に基づく基本計画を閣議決定しました。11月25日には海上自衛隊の補給艦・護衛艦などが出港し、12月2日からインド洋で米艦船への洋上給油を開始しました。航空自衛隊も国内外の輸送支援に参加しました。

海上自衛隊の中心任務は、アフガニスタン周辺でテロ対策の海上阻止活動などに従事する各国艦船に燃料や水を補給することでした。自衛隊が地上戦闘へ参加するのではなく、艦船が長期間活動できるよう後方から支える協力支援でした。

それでも、外国軍隊の活動をどこまで支援すれば憲法上禁止される武力行使との一体化に当たるのか、国会による統制をどう確保するのかなどが政治的な論争となりました。海外活動の拡大は、任務の増加だけでなく、活動範囲と法的限界をどこに置くかという問題を伴ったのです。

イラク戦争後、なぜさらに別の特別措置法がつくられたのか

2003年3月、アメリカなどがイラク戦争を開始しました。主要な戦闘が終結した後、国連安全保障理事会決議1483はイラクの復興支援を国際社会へ呼びかけました。日本政府は資金協力だけでなく人的な復興支援も行う方針をとります。

その法的根拠として2003年に成立したのが、イラク復興支援特別措置法です。正式には『イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法』といい、イラクの国家再建を支援する人道復興支援活動と安全確保支援活動を定めました。これはテロ対策特別措置法ともPKO協力法とも別の法律です。

同法は、自衛隊の活動地域について、現に戦闘行為が行われておらず、活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域であることを条件としました。政府はこの条件を満たす地域で活動すると説明しましたが、イラク全体の治安が不安定ななかで、活動地域の安全性や『戦闘地域』との区別は国会でも大きな争点となりました。

サマワ派遣では何が行われたのか

2003年12月、政府はイラク復興支援特別措置法に基づく基本計画を決定し、2004年1月には陸上自衛隊の先遣隊がイラク南部ムサンナー県のサマワへ入りました。本隊も順次派遣され、現地で人道復興支援活動が本格化します。

陸上自衛隊は給水、医療、学校など公共施設の復旧・整備を中心に活動しました。航空自衛隊はクウェートを拠点として人員・物資の輸送支援を行い、海上自衛隊も派遣部隊の車両・物資をクウェートへ輸送しました。イラク派遣は陸・海・空の自衛隊が異なる役割を担う活動となりました。

陸上自衛隊のサマワでの活動は2006年まで続きますが、このTopicでは派遣開始までを中心に見ます。重要なのは、自衛隊が戦闘任務を担うためではなく、特別措置法で定められた条件のもとで復興・輸送支援を行ったことと、その活動地域の安全性や憲法との関係をめぐって国内で賛否が続いたことです。

PKOから何が変わり、何が同じではなかったのか

1990年代のPKO参加では、国連の平和維持活動という枠組みが中心でした。9.11後には、テロ対策特別措置法によって国際的な対テロ活動への補給・輸送支援が加わり、イラク戦争後にはイラク復興支援特別措置法による復興・輸送支援が加わりました。自衛隊の海外活動の目的と地域が多様化したと整理できます。

一方で、これを『PKO法が改正されてイラク派遣まで可能になった』と理解すると誤りです。PKO、インド洋の補給活動、イラク復興支援は、それぞれ異なる法的根拠によって実施されました。特に2001年と2003年の活動は、個別の事態に対応する時限的な特別措置法をその都度つくる方式でした。

こうした経験は、その後の日本の安全保障政策を考える重要な前史となります。ただし、2014年の集団的自衛権をめぐる政府の憲法解釈変更や2015年の平和安全法制は、さらに後の別段階です。平成の安全保障政策は、一度に大きく変わったのではなく、異なる制度と政治論争を重ねながら変化しました。

自衛隊海外活動の拡大は、PKO→テロ対策→イラク復興という『一つの法律の拡張』ではなく、それぞれ異なる法的枠組みを積み重ねた過程として理解します。

Review

入試で押さえるポイント

  • 2001年9月11日の同時多発テロ後、テロ対策特別措置法が成立し、海上自衛隊がインド洋で補給支援を行ったこと
  • テロ対策特別措置法はPKO協力法とは別の時限的な特別措置法であり、国際的な対テロ活動への協力支援を定めたこと
  • 2003年のイラク戦争後、イラク復興支援特別措置法が成立し、これもテロ対策特別措置法とは別の法的枠組みだったこと
  • 2004年から陸上自衛隊がイラク南部サマワへ派遣され、給水・医療・公共施設復旧などの人道復興支援を行ったこと
  • PKO、インド洋補給活動、イラク復興支援を同じ制度として扱わず、2014〜2015年の安全保障政策とも段階を区別すること

Check

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0 / 5 問回答

  1. 問1

    2001年のテロ対策特別措置法は、1992年のPKO協力法をそのまま適用して成立した制度であり、別の法的根拠ではなかった。

  2. 問2

    インド洋での海上自衛隊の中心任務は、各国艦船への燃料や水の補給などの後方支援だった。

  3. 問3

    2004年のイラク派遣は、テロ対策特別措置法の活動範囲をイラクへ広げるだけで実施され、新しい法律は制定されなかった。

  4. 問4

    サマワへ派遣された陸上自衛隊は、給水・医療・公共施設復旧などの人道復興支援を行った。

  5. 問5

    PKO、インド洋での補給活動、イラク復興支援は、いずれも同一の法律に基づく一つの制度の連続的な拡張だった。

Timeline

関連する年表

前後の出来事とつなげて位置を確認できます。

  1. アメリカ同時多発テロ事件が起こる
  2. テロ対策特別措置法が成立する
  3. 海上自衛隊がインド洋へ派遣され補給活動を開始する
  4. アメリカなどがイラク戦争を開始する
  5. イラク復興支援特別措置法が成立する
  6. 陸上自衛隊がイラクのサマワへ派遣される

Sources

参考資料

  1. 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法衆議院

    2001年テロ対策特別措置法の目的、諸外国の軍隊等への協力支援などの法的枠組みを確認

  2. テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画首相官邸

    2001年11月16日の基本計画と、その後の変更を含む活動方針を確認

  3. 防衛年表防衛省

    2001年11月の艦艇派遣と12月2日のインド洋洋上給油開始など、テロ対策特措法に基づく活動時系列を確認

  4. イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法衆議院

    2003年イラク復興支援特別措置法の目的、人道復興支援活動・安全確保支援活動、活動地域の条件を確認

  5. イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置防衛省

    サマワを中心とする陸上自衛隊の活動地域、人道復興支援を中心とする任務、活動地域選定の条件を確認

  6. 外交青書2004 イラクへの貢献外務省

    2004年の陸上自衛隊サマワ派遣、給水・医療・公共施設復旧、航空自衛隊輸送などの実施状況を確認