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令和時代2021〜2025年政治・外交重要度 A

安全保障3文書・反撃能力と防衛力強化―日本の安全保障政策は2022年に何を転換したのかあんぜんほしょうさんぶんしょ はんげきのうりょくとぼうえいりょくきょうか にほんのあんぜんほしょうせいさくはにせんにじゅうにねんになにをてんかんしたのか

一言でいうと

2022年12月16日、政府は国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の安全保障関連3文書を決定しました。そこでは、厳しさを増す安全保障環境を前提に、防衛力を抜本的に強化し、スタンド・オフ防衛能力などを用いた『反撃能力』を保有する方針が示されました。反撃能力は、武力攻撃が発生した場合に武力行使の三要件の下で必要最小限度の自衛措置として用いる能力とされ、無制限の武力行使や先制攻撃を認める制度として定義されたものではありません。2023〜2027年度の防衛力整備の水準は43兆円程度とされ、日米同盟に加えてQUAD、日米韓、豪州・英国・フィリピンなどとの協力も拡大しました。2025年にはサイバー対処能力強化法などが成立し、3文書で示された構想が装備・協力枠組み・サイバー制度へ具体化していきました。この転換は2014〜2015年の集団的自衛権をめぐる閣議決定・平和安全法制を置き換えたものではなく、その既存法制の下で、防衛力の水準、反撃能力、同志国との協力、サイバー対処を強化する政策変更として理解する必要があります。

3文書の前に、安全保障協力はどう広がっていたのか

令和初期、日本は日米同盟を安全保障政策の基軸としながら、豪州、インド、欧州諸国などとの協力も広げていました。2021年9月には日米豪印4か国による初の対面形式のQUAD首脳会合が開かれ、自由で開かれたインド太平洋をめぐる協力が進みました。

同時に、中国の軍事力拡大、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵攻などが重なり、日本政府は安全保障環境を従来以上に厳しいものと評価するようになりました。こうした認識が、2022年の安全保障関連3文書の策定につながりました。

ただし、ウクライナ侵攻が3文書の唯一の原因だったと考えるのは適切ではありません。東アジアの軍事情勢、ミサイル技術の進展、サイバー・宇宙領域の重要性、日米同盟と同志国協力の拡大など複数の要因が重なっていました。

安全保障関連3文書は何を定めたのか

2022年12月16日、国家安全保障会議と閣議は、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画を決定しました。国家安全保障戦略は外交・防衛・経済安全保障などを含む最上位の基本方針、国家防衛戦略は防衛目標とその達成方法、防衛力整備計画は装備・組織・経費など具体的な整備方針を示します。

2013年に初めて策定された国家安全保障戦略が改定されるとともに、従来の『防衛計画の大綱』『中期防衛力整備計画』に代わって国家防衛戦略と防衛力整備計画が置かれました。名称変更だけではなく、安全保障政策、防衛構想、装備・予算を一体的に示す構成へ整理された点が重要です。

3文書は、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛、無人アセット、宇宙・サイバー・電磁波領域、弾薬・燃料、施設強靱化など幅広い分野の強化を掲げました。つまり転換の中心は、一つの新兵器ではなく、自衛隊が継続して活動するための能力全体を強化することにありました。

『反撃能力』とは何で、何ではないのか

国家防衛戦略は、弾道ミサイルなどによる攻撃に対し、既存のミサイル防衛だけでは完全な対応が難しくなりつつあるとして、反撃能力を保有する方針を示しました。スタンド・オフ・ミサイルなどを活用し、相手からのさらなる武力攻撃を防ぐ能力を持つことで抑止力を高める考えです。

防衛省は反撃能力を、我が国への武力攻撃が発生し、武力行使の三要件に基づいて、攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛措置として相手領域に有効な反撃を加える能力と説明しています。したがって、攻撃を受けていない段階で任意に相手国を攻撃する『先制攻撃』を制度化したという説明は正確ではありません。

また、反撃能力の保有は憲法改正そのものではありません。政府は現行憲法と既存の武力行使の三要件の枠内で保有すると位置づけました。その是非や憲法との関係について政治的・法的な議論があることと、政府文書がどのような条件で能力を位置づけたかは分けて理解する必要があります。

反撃能力は、政府文書上、武力攻撃発生後に武力行使の三要件の下で行う必要最小限度の自衛措置として位置づけられています。

防衛力強化は予算と整備計画にどう具体化したのか

防衛力整備計画は、2023年度から2027年度までの5年間に必要な防衛力整備の水準を43兆円程度としました。これは装備品だけでなく、施設、研究開発、システム、弾薬・燃料、維持整備などを含む防衛力全体の整備規模です。

政府は財源について、歳出改革、決算剰余金、税外収入を用いる防衛力強化資金、税制措置などを組み合わせる方針を示しました。防衛力の強化は、必要な能力を何に定めるかだけでなく、それを複数年度にわたりどう財政的に支えるかという課題を伴いました。

そのため『防衛費を増やした』だけで政策転換を説明するのは不十分です。整備する能力、調達・生産基盤、自衛隊員、施設、継戦能力、財源をまとめて強化する構想として理解する必要があります。

日米同盟に加え、同志国との安全保障協力はどう広がったのか

3文書後、日本は日米同盟を中心にしながら、多国間・同志国間の協力を制度化していきました。2023年8月のキャンプ・デービッドでの日米韓首脳会合では、首脳・外相・防衛相などの協議を継続し、安全保障や経済安全保障を含む3か国協力を強化する方向が示されました。

豪州・英国とは部隊間協力円滑化協定が発効し、2024年7月にはフィリピンとも同協定に署名しました。これらは、自衛隊と相手国軍が共同訓練などで相互に訪問する際の手続や地位を定め、実際の協力活動を行いやすくする制度です。

この動きは、日本が日米二国間同盟をやめて多国間同盟へ移行したことを意味しません。日米同盟を基軸としつつ、地域や課題ごとに複数のパートナーとの協力を重ねる『ネットワーク型』の安全保障協力が広がったと捉える方が正確です。

2025年のサイバー対処能力強化は3文書とどうつながるのか

国家安全保障戦略は、重大なサイバー攻撃への対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる方針を掲げました。これを具体化する制度として、2025年5月にサイバー対処能力強化法と関連整備法が成立しました。

政府は、官民連携、通信情報の利用、重大なサイバー攻撃の被害防止に向けた措置などを通じ、重要インフラや政府機関の安全を高める制度を整備しました。いわゆる『能動的サイバー防御』をめぐる議論は、通信の秘密や権限統制との関係も含むため、単なる技術政策ではなく法制度上の課題でもあります。

このように2022年の3文書は一度の閣議決定で完結せず、その後の予算、装備、国際協力、サイバー法制を通じて実施されました。安全保障政策の転換を見る際には、方針決定と具体的制度化を時間軸で分けることが重要です。

Review

入試で押さえるポイント

  • 2022年12月16日に国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の安全保障関連3文書が決定された
  • 反撃能力は、武力攻撃発生時に武力行使の三要件に基づく必要最小限度の自衛措置として位置づけられた
  • 防衛力整備計画は2023〜2027年度の5年間の防衛力整備の水準を43兆円程度とした
  • 安全保障協力は日米同盟を基軸としつつ、QUAD、日米韓、豪州・英国・フィリピンなどとの協力へ広がった
  • 2025年にはサイバー対処能力強化法などが成立し、3文書に基づくサイバー対処能力強化が制度化された
  • 2022年の3文書は2014〜2015年の集団的自衛権・平和安全法制や憲法改正と同一の制度変更ではない

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  1. 問1

    2022年の安全保障関連3文書は、国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画からなり、外交・防衛の基本方針から具体的な整備計画まで役割を分けて示した。

  2. 問2

    政府文書上の反撃能力は、武力攻撃が発生していない段階でも日本の判断だけで相手国を任意に攻撃できる先制攻撃能力として位置づけられた。

  3. 問3

    反撃能力を保有する方針の決定そのものが、日本国憲法9条の条文を改正したことを意味する。

  4. 問4

    防衛力整備計画の約43兆円規模は、ミサイルなどの新装備だけでなく、施設、弾薬・燃料、研究開発、維持整備などを含む防衛力全体の整備を対象とした。

  5. 問5

    日米韓や豪州・英国・フィリピンとの安全保障協力が広がったことで、日本は日米同盟を安全保障政策の基軸とする方針をやめた。

Timeline

関連する年表

前後の出来事とつなげて位置を確認できます。

  1. 日米豪印4か国の首脳が初の対面形式のQUAD首脳会合を開く
  2. 政府が国家安全保障戦略など安全保障関連3文書を改定する
  3. 日米韓3か国首脳がキャンプ・デービッドで会談する
  4. 日本とフィリピンが部隊間協力円滑化協定に署名する
  5. サイバー対処能力強化法などが成立する

Sources

参考資料

  1. 国家安全保障戦略について内閣官房

    2022年12月16日の国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の決定を確認

  2. 国家防衛戦略(概要)防衛省

    反撃能力の必要性・定義と武力行使の三要件との関係を確認

  3. 令和6年版防衛白書 資料3 防衛力整備計画について防衛省

    2023〜2027年度の防衛力整備水準43兆円程度と整備方針を確認

  4. 日米韓首脳会合及びワーキング・ランチ外務省

    2023年8月のキャンプ・デービッドにおける日米韓協力を確認

  5. 日・フィリピン部隊間協力円滑化協定外務省

    2024年7月8日の署名と協定の目的を確認

  6. サイバー安全保障に関する取組内閣官房

    2025年5月のサイバー対処能力強化法・整備法成立と国家安全保障戦略との接続を確認